前立腺癌総合治療センターこのページを印刷する - 前立腺癌総合治療センター

部門紹介

前立腺癌総合治療センターでは、前立腺癌の診断から治療までを総合的に行っています。
手術療法としては、ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘術を、放射線治療としては、イリジウムによる高線量率組織内照射(一時留置法)、小線源を前立腺組織内に埋め込んで治療する低線量率組織内照射(永久留置法)を使い分け治療を行っています。また、重粒子線治療については、九州国際重粒子線がん治療センターと連携して行います。

前立腺針生検数

2019年 2020年 2021年 2022年 2023年
242 193 204 216 261
 

局所前立腺癌根治治療数

  2019年 2020年 2021年 2022年 2023年
開腹前立腺全摘 0 0 0 0 0
腹腔鏡下前立腺全摘 0 0 0 0 0
ロボット支援前立腺全摘 68 51 59 43 63
HDR-BT
(高線量率組織内照射)
7 7 1 0 0
LDR-BT
(低線量率組織内照射)
1 1 3 0 0
76 59 63 43 63

診断・検査

外来では、血液検査(前立腺腫瘍マーカー:PSA)、肛門からの前立腺触診、前立腺エコー検査を行います。また、場合によりMRI検査を追加する事もあります。さらに、前立腺癌が疑われる場合には、前立腺の針生検(組織検査)により病理学的確定診断を行います。当院では仙骨からのブロック麻酔後に、前立腺に針を刺して組織を採取します(一泊入院)。
生検で前立腺癌と診断された場合は、さらに癌の広がりおよび転移の有無を調べるために、骨シンチグラフィー(前立腺癌の遠隔転移臓器は骨が最も多い)、CT検査、MRI検査などを行います。これらの検査の結果から、臨床病期(ステージ)を決定し、治療法を検討します。

がん情報サービス
 

前立腺針生検数

2019年 2020年 2021年 2022年 2023年
242 193 204 216 261

ロボット支援腹腔鏡下前立腺摘除術

ロボットを使用した内視鏡(腹腔鏡)手術です。腹部に6カ所の小さな穴を開け、前立腺と精嚢を切除し、そののち、膀胱と尿道をつなぎあわせます。また、骨盤内のリンパ節(癌が微小転移しやすい部位)も同時に切除する場合もあります。通常、順調に経過すれば術後10日前後には退院できます。
メリットとして、癌の進行の程度を、顕微鏡的に正確に判断できる、手術後の再発がPSA測定にて容易に判断できる、再発した場合に放射線外照射を追加できるなどがありますが、デメリットとして、お腹に力を入れた時に尿が漏れやすく(術後1年以内で80~90%の方は尿漏れパッドなし、多くは3~6ヶ月で改善します)、また、勃起や射精など性機能の障害もあります。
 

放射線治療

治療成績は手術とあまり差はありません。メリットとして、手術と比較して、尿失禁、性機能障害が少ないなど体への負担が少ないことがありますが、一方、癌の進行程度や治療効果を評価することを確認することが困難であり、また、治療の数か月~10年以上後に、尿道狭窄、膀胱出血や直腸出血、まれに直腸潰瘍や穿孔(穴が開くこと)などの重篤な事態が発生することがあり、その場合、治療は困難です。
放射線治療の方法としては重粒子線治療、IMRT、組織内照射(ブラキテラピー・小線源療法)があります。
 

内分泌治療・薬物治療

前立腺癌は、男性ホルモン(精巣と副腎から分泌)の刺激で増殖します。そこで、去勢術またはホルモン剤の皮下注射+内服薬により、男性ホルモンの分泌を抑えることで、癌の増殖を抑える治療です。ただ、ある程度の期間(数か月~10年以上)をおいて、治療効果がなくなる(去勢抵抗性)ことも少なくありません。適応としては、転移を伴う前立腺癌の方、局所前立腺癌でも高齢者(75歳以上)の方や身体に重篤な合併症をもっている方などです。副作用は性機能低下、女性の更年期障害のような発汗やほてりなど、体重増加、骨粗鬆症、筋力低下、血糖値の上昇、稀ですが、肝機能障害、間質性肺炎などがあります。去勢抵抗性に移行した場合、数種類の新しい内服薬や抗腫瘍剤などに、変更することになります。
 

監視療法・待機療法

前立腺癌は一般に増殖が比較的遅いものが多く、癌が生命や生活に影響を及ばさない場合もありえます。すぐに治療を行うのでなく、PSAでの経過観察や再度前立腺生検を施行し、癌細胞の悪化や癌の進行がみられた場合に根治治療を行うというのが監視療法という考え方です。一般に、低リスク群が良い適応と言われています。中期的な臨床データより監視療法中に治療介入になる可能性は30%程度といわれ、10年で98-99%の方が前立腺癌にて死亡しないといわれています。
待機療法とは監視療法と異なり、転移による症状などが出現するまで治療をせず、治療する場合は根治治療でなく内分泌療法を受けることです。一般にご高齢の方で積極的治療を望まない方が適応となります。