リウマチ・膠原病センターこのページを印刷する - リウマチ・膠原病センター

部門紹介

リウマチ・膠原病センターでは、全身性自己免疫疾患である膠原病、関節リウマチの診療を行っています。実際に患者さんの病状を改善し、日常生活の質を維持することを目標に、 それぞれの患者さんにあった治療を行っております。リウマチ整形外科医7名(専門医3名)と膠原病内科医9名(専門医7名)から構成され、 リウマチ性疾患に対するチーム医療を共通の基準で積極的に推進しています。
リウマチ科・整形外科では、関節リウマチおよび変形性関節症を中心に手術療法・薬物療法をおこない、 特に関節病変の評価と手術適応の決定、リウマチ外科専門手術をおこなっています。膠原病内科では、関節リウマチ薬物療法、重症関節外病変や合併症の治療、膠原病の診断・治療をおこなっています。

当センターでは、これらの総合的医療を推進するために、整形外科医、内科医、看護師、理学療法士、薬剤師、栄養士のスタッフの協力体制に基づくチーム医療を実践しています。

リウマチ科・整形外科

リウマチ科・整形外科では、リウマチ性疾患の診断、薬物治療、そして手術治療までを行っています。
関節リウマチに代表される関節炎の患者さんは、発症してもすぐに診断がつかないことがしばしばあります。また薬物治療の選択肢も急増しており、どの薬剤を使用したら良いのか、専門的な判断が必要となる機会が増えています。近隣の医療機関からの紹介・受け入れがスムースに行えるように、外来および入院での診療体制を整えています。
関節リウマチの薬物治療は目覚ましく進歩していますが、それでも関節の変形に対して手術を要する患者さんがまだまだ存在します。「医療センターで手術をして良かった」と思って頂けることを、スタッフ一同で心がけています。
 

膠原病内科

膠原病内科では、当院の基本理念に沿い、患者さん・ご家族の気持ちを尊重した診療を行っております。
膠原病は一般にはなじみの薄い病気ですが、丁寧な説明と応対に努め、患者さん・家族の皆様と医療チームとの十分な信頼関係の構築を目標としています。

入院治療では、関節リウマチ・膠原病を発症した患者さんに対して診断のための精査・治療導入、また、治療効果が十分でない患者さんの治療、合併症などにより他院で対応困難な難治性の患者さんの治療などに対応しています。

2023年(1~12月)の膠原病内科診療患者数は、表1に示すように、入院524名、外来2003名、新規指定難病申請数63名、継続数731名でした。
関節リウマチの治療は、生物学的製剤・JAK阻害薬の登場により近年目覚しい進歩があります。当科における2023年までの生物学的製剤・JAK阻害薬の累積使用患者数は、インフリキシマブ116名、エタネルセプト136名、アダリムマブ109名、ゴリムマブ36名、セルトリズマブペゴル14名、オゾラリズマブ1名、トシリズマブ176名、サリルマブ10名、アバタセプト103名、トファシチニブ67名、バリシチニブ24名、ペフィシチニブ14名、ウパダシチニブ18名、フィルゴチニブ11名です。

また、関節リウマチ治療における医療費の高額化が問題となっており、その解決策の一つとして、後発医薬品(バイオシミラー:BS)の開発が進められています。
当科では2015年よりBS治療を開始し、治療費の削減とともに切り替えによる安全性においても問題ないことを確認しております。現在もサイトカインシグナル伝達をターゲットとした分子標的治療薬が開発中であり、これらの新規治療に対応していきます。
全身性エリテマトーデスに対する治療は、副腎皮質ステロイド剤が基本となります。精神神経ループスやループス腎炎など重要臓器に病変を有する場合にはステロイドパルス療法、シクロフォスファミド、リツキシマブ、ミコフェノール酸モフェチルなどの免疫抑制剤、血液浄化療法を行っております。さらに、生物学的製剤であるべリムマブやアニフロルマブによる治療も積極的に行っております。 その他の膠原病性疾患についても、生物学的製剤使用を含めた積極的な診断・治療を行っています。


 

関節リウマチの手術実績

関節リウマチの手術治療も、生物学的製剤の登場によって、大きく変化しています。従来は進行した関節破壊に対する膝や股関節の人工関節手術が主流でしたが、近年は大関節の人工関節手術は減少し、より軽度の関節変形に対する手術が増えています。
2023年に、関節リウマチに対する手術は164件でした。人工関節が31件、関節形成術が41件、脊椎手術が32件、骨折などが24件となります。関節リウマチの手術は難易度の高いものも多く、より高度な専門性および技術を必要とします。当科の手術実績は日本でも有数であり、豊富な臨床経験を生かして、より安全で精度の高い手術を提供するよう心がけています。

 

地域医療機関との連携

ますます高度化するリウマチ・膠原病診療には、かかりつけ医・地域医療機関と専門・総合医療の受けられる当センターとの連携が重要です。当センターは福岡地区のリウマチ診療基幹施設として中心的な役割を担っています。福岡リウマチ懇話会、九州リウマチ学会、日本リウマチ学会において治療成績の情報公開、新しい薬物療法に関して福岡薬物療法フォーラムで随時情報発信・交換をおこなっています。今後日常診療の場でもさらに密接な連携医療を行っていこうと考えています。

 

リウマチ・膠原病専門医研修施設として

教育面では日本リウマチ学会認定教育施設として、毎年多くのレジデント・研修医の指導をおこなっています。若手リウマチ膠原病科医を対象とした教育セミナーも数多く開催し、効率的な診断法、多くの治療の選択肢、関節エコーや関節注射の手技など、専門医としてリウマチ膠原病の診療ができる医師の育成に力を入れています。
研究面では、厚生労働省班研究の一環として免疫異常ネットワークの中で、リウマチの臨床疫学や治験推進に向けた研究・情報交換を開始しています。これらをもとにリウマチ・膠原病の臨床研究と先進的医療をさらに推進しております。