口腔腫瘍・口腔ケアセンターこのページを印刷する - 口腔腫瘍・口腔ケアセンター

部門紹介

口の中には、ほかの臓器と同じように顎の中、舌、頬、歯ぐきなどに腫瘍ができます。腫瘍は良性腫瘍、悪性腫瘍(口腔がん)に分けられます。このような腫瘍性病変の治療を行うため2014年4月に国立病院機構としては初めて『口腔腫瘍・口腔ケアセンター』を開設致しました。総合病院での特色を活かし医科各診療科と協力して治療を行います。また、当院で治療を受けられるがん患者の皆様の口腔管理も地域の歯科と連携し行います。

 

口腔がんについて

口腔がんの90%以上は扁平上皮癌と呼ばれる「癌腫」が占めます。すなわち舌癌、歯肉癌、頬粘膜癌などを意味しますが、口腔癌の中では舌癌が最も多く、次に歯ぐきの癌となります。口腔癌治療では、口腔機能の温存、治療後の咀嚼・嚥下、発音の機能回復が重要となります。口腔癌の治療については、当科では口腔癌取り扱い規約、口腔癌診療ガイドライン(図1)に沿った治療を行います。さらに、口腔外科、腫瘍内科、放射線科、耳鼻科、医科各科、さらには看護部、NST、薬剤部、リハビリテーション部門などと連携し、口腔がん(癌)治療のチーム医療を実践しています。


図1

当科における舌癌治療の特徴

舌進行癌に対しては、超選択的動注化学放射線療法(図2)を行い、できるだけ癌を縮小させ手術を行います。この治療は、カテーテル抗がん剤治療とも呼ばれ、当科では放射線医により足の付け根の動脈からカテーテルを挿入し、口腔の癌の部位に直接抗がん剤を注入する方法です。組織学的治療効果は非常に高く、当科の研究では症例の96%でグレードIIb以上の効果が得られました。これらの研究結果は日本口腔腫瘍学会誌28巻2号2016年に論文掲載され、2017年に学会賞を受賞しました。


図2

下顎歯肉癌の治療(顎の再建について)

進行した顎の癌では顎を切除します。特に、下顎は顔面下 1/3 の形態を形成しており、咀嚼,嚥下の機能面や顔貌を担う主要な部分であり,QOLの維持,咀嚼嚥下機能回復において3次元的な再建が必要となります。当科では、CTデータをもとに3D立体モデル(図3)を作製し、術前に顎の欠損状態、再建方法についてシミュレーションを行います。再建方法は、チタンプレート、骨移植による再建などがありますが、骨を移植する場合は、形成外科と共同で血管柄付き腓骨を用いて再建を行います。立体モデル上で移植骨のサイズ、形態、さらに骨を固定する再建用チタンプレートを術前に正確に決め手術を行います。さらに、術後は歯科インプラント治療も含めた咬合再建も考慮し手術を行います。


図3

化学、放射線治療について

化学療法(抗がん剤治療)、放射線治療は、毎週木曜日に口腔腫瘍カンファレンスにて治療方針を決めます。化学療法は、腫瘍内科にて患者さんの病状に合わせて分子標的薬治療、免疫療法も可能です。また、放射線治療は来年に新放射線治療室が完成し、患者さんにさらに高度な治療が可能となります。