頭頸部腫瘍センター
部門紹介
頭頸部領域とは頭蓋底部から鎖骨までの顔面や首の領域のことを指します。この範囲に含まれる鼻副鼻腔、口腔、咽頭、喉頭、唾液腺、甲状腺などにできる腫瘍を総称して「頭頸部腫瘍」(癌の場合は「頭頸部癌」と呼びます。頭頸部は摂食、そしゃく、嚥下、発声などの日常生活や整容に関わる部位であることから、腫瘍やその治療により機能や整容が損なわれることがあります。
当センターでは耳鼻咽喉科、放射線科、腫瘍内科、口腔外科が連携して患者さんのQOL(Quality of Life: 生活の質)に配慮した治療を心がけています。
当センターでは耳鼻咽喉科、放射線科、腫瘍内科、口腔外科が連携して患者さんのQOL(Quality of Life: 生活の質)に配慮した治療を心がけています。
頭頸部腫瘍センター長 中島寅彦
- 昭和63年 九州大学附属病院研修医
- 平成10年 MD Anderson Cancer Center 留学
- 平成12年 九州大学病院耳鼻咽喉科助手
- 平成24年 九州大学医学研究院耳鼻咽喉科准教授
- 平成28年 国立病院機構九州医療センター 耳鼻咽喉科・頭頸部腫瘍センター
- 平成29年 九州大学医学部臨床教授
頭頸部癌について
全癌の約5%にあたり、頻度が多いものとしては口腔癌(舌癌)、喉頭癌、甲状腺癌があります。発生部位によりその生物学的な特徴や症状、治療法は異なります。
耳 | 外耳癌、中耳癌 |
---|---|
鼻・副鼻腔 | 鼻腔癌、上顎洞癌、篩骨洞(しこつどう)癌 など |
口腔 | 舌癌、口腔底癌、歯肉癌 など |
咽頭 | 上咽頭癌、中咽頭癌、下咽頭癌 |
喉頭 | 喉頭癌 |
頸部 | 甲状腺癌、頸部食道癌、原発不明癌 など |
唾液腺 | 耳下腺癌、顎下腺癌、舌下腺癌、小唾液腺癌 |
甲状腺癌 | 乳頭癌、濾胞癌、瑞鷹癌、未分化癌 |
頸部 | 原発不明癌、悪性リンパ腫、悪性神経鞘腫、頸動脈小体腫瘍など |
頭頸部癌の症状
自覚症状はその発生部位によりさまざまです(主な症状の表参照)。喉頭がんは声のかすれ、咽頭がんは嚥下の際の喉の違和感、頸部のしこりなどが挙げられますが、初期は自覚症状に乏しく気付かないこともあり、胃がん検診の経鼻・経口内視鏡検査で、咽頭がんが見つかる例も珍しくありません。
主な症状
鼻副鼻腔癌 | 鼻閉、鼻出血、顔の腫脹、複視など |
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上咽頭癌 | 難聴(滲出性中耳炎)、鼻閉、鼻出血、複視、頸部リンパ節腫脹など |
中咽頭癌 | のどの痛み、違和感、嚥下障害、咽頭出血、頸部リンパ節腫脹など |
下咽頭癌 | のどの痛み、違和感、嚥下障害、嗄声、頸部リンパ節腫脹など |
口腔癌 | 口内炎、舌のびらん、潰瘍、痛み、構音障害、咀嚼・嚥下困難など |
喉頭癌 | 嗄声、のどの違和感、呼吸困難など |
唾液腺癌 | 顔面、頸部のしこり、顔面の痛み、顔面神経麻痺など |
甲状腺癌 | 頸部の腫脹、嗄声、嚥下障害など |
頭頸部癌の治療方針
頭頸部癌の治療は根治を目指すには生活の質(QOL)を低下させずに切除が可能であれば基本的に手術を選択します。しかし、QOLが下がる恐れの局所進行がんも多く、代替手段として化学放射線療法(CRT: Chemoradiotherapy)が重要な選択肢になります。
また、喉頭温存目的での導入化学療法も広く行われています。再発・転移癌には化学療法や免疫チェックポイント阻害薬を中心とした薬物療法が選択されることになります。
新患の治療方針は、耳鼻咽喉科、腫瘍内科、口腔外科、放射線科などが参加して毎週行われる「頭頸部がんカンファレンス」で決定されます。
また、喉頭温存目的での導入化学療法も広く行われています。再発・転移癌には化学療法や免疫チェックポイント阻害薬を中心とした薬物療法が選択されることになります。
新患の治療方針は、耳鼻咽喉科、腫瘍内科、口腔外科、放射線科などが参加して毎週行われる「頭頸部がんカンファレンス」で決定されます。
頭頸部癌の最新治療
ロボット手術
当院では早期の咽頭癌、喉頭癌に対し、ロボット支援下・経口的咽喉頭癌切除術(TORS: Transoral Robotic Surgery)を行っています。従来は外科医の視力、器用さに頼っていた手術ですが、海外ではロボット手術により、癌の取り残しが減り、術後の化学療法や放射線治療が不要になったり、生存率が上がったりしていると報告されています。日本国内では頭頸部癌に対して、ロボット手術が行える施設はわずかですが、当院では先進的かつ安全な手術を目指して2022年7月より導入しております。「切除不能な局所進行または局所再発の頭頸部癌」に対する光免疫療法
頭頸部癌の光免疫療法に用いられるアキャルックスが世界に先駆けて国内で承認されました。令和四年度から保険適応になり、当院でも治療を開始します。頭頸部癌の多くが有する「上皮成長因子受容体(EGFR)」に結合するセツキシマブという抗腫瘍薬と光感受性物質を組み合わせた薬剤アキャルックスを、点滴で投与します。その後、アキャルックスが結合したがん細胞にレーザー光を当てることで、薬剤が反応し、癌の細胞が死滅します。この一連の治療名称がアルミノックス治療(光免疫療法)と言います。
臨床研究
既存の治療で治らない頭頸部癌に対して、複数の臨床試験を行っております。ご希望の患者さんはかかりつけの主治医と相談のうえ、受診をご検討ください。
- 再発又は転移性頭頸部扁平上皮がん(SCCHN)患者の一次 治療を対象に,ニボルマブ及びイピリムマブの併用療法と Extreme 試験レジメン(セツキシマブ+シスプラチン/ カルボプラチン+フルオロウラシル)の 2 群を比較する 無作為化非盲検第III相試験
- PD-L1陽性の再発又は転移性頭頸部扁平上皮癌(R/M HNSCC)患者を対象に1次治療としてペムブロリズマブ(MK-3475)とレンバチニブ(E7080/MK-7902)併用療法の有効性及び安全性をペムブロリズマブ単独療法と比較する無作為化プラセボ対照二重盲検第III相試験(LEAP-010試験)』
- 局所進行切除可能HPV陽性中咽頭癌に対する導入化学療法後の低侵襲手術に関する第2相試験
- アンドロゲン受容体陽性唾液腺癌に対するアンドロゲン受容体阻害薬 Darolutamide(ODM-201)の第II相試験