肥満外科外来このページを印刷する - 肥満外科外来

概要紹介

肥満症は、体重が増加するだけでなく、2型糖尿病、脂肪肝、高血圧、高脂血症、睡眠時無呼吸症候群など様々な健康障害を引き越し、将来的にさらなる多臓器障害へとつながる恐れがあります。
従来は内科治療が中心でしたが、「減量手術」と呼ばれる外科治療が欧米だけでなく、日本でも肥満症の確立された一つの治療法として日本肥満症治療学会、糖尿病学会からも支持されています。
私たちのチームでは、食事療法、運動療法、内科的治療を行いながら、患者さん一人一人にただ体重を落とすのではなく今後の人生を健康的に過ごしていただくために、本当に手術が必要かどうか見極めた上で胃を小さくする「スリーブ状胃切除」を中心に全て腹腔鏡手術で行なっています。
 
診療日時 原則として完全予約制です。
電話で予約を取得してください。代表電話(092)852-0700。
受診の際は、内科・精神科など全てのかかりつけの先生からの紹介状が
必要となりますので、忘れないようにしてください。
料金 腹腔鏡下スリーブ状胃切除術であれば保険診療で受けられます。
場所 外来棟1F 4番 外科外来
担当 消化管外科 久松 雄一

肥満は「病気」?

我が国ではBMI(体重(kg)/身長(m)2)が25以上を肥満、35以上を高度肥満としています。さらに、糖尿病や高血圧症、高脂血症、冠動脈疾患、脳血管障害、睡眠時無呼吸症候群、運動器疾患(膝などの関節変形)、月経異常、不妊など様々な健康障害を引き起こした状態を肥満症と定義しています。

日本でも食生活の欧米化などにより肥満患者は増え続けています。欧米人に比べるとその数や程度は低いと言っても、人口の約25%が肥満、そのうち高度肥満症は人口の0.5%、実に約60万人以上いると言われており、今後大きな問題になっていくと思われます。

高度肥満症では突然死のリスクも健常人の倍近くあると報告されているだけでなく、上に記載した心肺肝腎脳などの様々な関連疾患や大腸癌、乳癌など肥満が関連する癌(肥満が癌のリスクを上げる)なども問題となってくるように、様々な病気がドミノ倒しのように起こることから「メタボリックドミノ」とも話題になっています。
 

肥満・糖尿病外科手術とは

肥満はまずは内科治療が原則ですが、高度肥満の方は、長期にわたるコントロールが困難で、9割以上がリバウンドすると言われています。このような内科治療抵抗性の肥満に対して、外科治療(肥満手術、減量手術)の有効性が示されています。

海外の報告では、肥満手術は、内科治療と比べて著明に減量でき、かつ長期にわたってその効果が持続出来ることが証明されています。また、長期にわたる十分な減量によって、糖尿病などの肥満関連合併症が、高率に改善(場合によっては治癒)することが分かっています。

日本の報告でも、腹腔鏡下スリーブ状胃切除術の良好な体重減少と肥満 2 型糖尿病に対する有効性が既に証明されており、学会からも 6 か月以上の専門的内科治療によっても体重減少や血糖コントロールの改善が不十分な場合には、いたずらに現状を放置することなく治療選択肢として肥満手術を考慮すべきであると記されています。

当院では、現在唯一保険で認められている、腹腔鏡下スリーブ状胃切除術を導入致しました。患者さんによっては、バイパス術などの他の術式が勧められる場合もありますが、まずはご相談下さい。
 

腹腔鏡下スリーブ状胃切除術

胃の大半を切り取り、胃をバナナ1本くらいの大きさにする手術です。小さな胃で食事摂取量を制限し、少量の食事で満腹感を得られます。また、食欲増進ホルモンのグレリンの分泌を抑えるため、食欲自体のコントロールも出来ます。比較的新しい手術のため、長期成績が出ていませんが、短期成績では良好な効果が得られています。

手術はお腹を大きく切開する開腹手術ではなく、腹腔鏡を用いて行います。腹腔鏡手術は開腹手術に比べ、創が小さく、リスクが低いことが分かっています。お腹に5mm~15mmの小さな穴を5か所あけ、お腹に挿入したカメラ画像をモニターで見ながら行います。

日本では唯一保険で認められており、大部分がこの術式です。世界でも急増しており、主流の術式になりつつあります。
手術の安全性は海外と比較しても高く、当院でもこれまでに70人以上の患者さんに手術を行ってきましたが、縫合不全や出血などの合併症は幸い当院ではまだ一例も経験していません。
腹腔鏡下スリーブ状胃切除術

手術までの流れ

  • 外科、代謝内分泌内科、管理栄養士だけでなく、循環器内科、呼吸器内科や精神科医による診察を行い、約6ヶ月程度をかけて体重の5-10%程度を目指して術前減量を行います。減量手術の前に減量するというのは、矛盾するように思われるかもしれませんが、手術リスクを少しでも減らし、合併症を予防するために、最も重要なプロセスです。また、術前減量がきちんと出来ない方は、術後の減量効果が小さいことやリバウンドしてしまうことも分かっており、術前減量が出来ず、体重が増加した方は、手術を中止・延期致します。
  • 手術の適応が、「専門医による6ヶ月以上の内科治療が行われ、かつ抵抗性であること」ですので、術前に当院の代謝内分泌内科医による判断が必要になります。また、手術を受けさえすれば楽に痩せられる訳ではなく、術後にも食事療法などの内科的治療をきちんと継続できなければ、十分な効果は得られません。このような理由から、当院では術前に必ず約2週間の入院の上、肥満や関連疾患に関する検査等の、内科プログラムを受けて頂きます。
  • 手術1-2日前に入院、術後7-10日間で退院の予定です。(合併症などで、医師が必要と認めた場合には、退院が延期となることがあります。)

手術の効果を最大限に継続するためには、定期的なフォローが必要不可欠です。定期受診しなくなった患者さんは、リバウンドする確率が高いことが分かっています。
退院後は、外科医の診察・検査(必要に応じて各内科医の診察)、栄養士による栄養指導を、術後1,3,6,12ヶ月、以後1年おきに行い、減量の維持・関連疾患のフォローを致します。(患者さんの状況に応じて、より頻回に受診して頂く場合があります。)